イスラエル旅行に行ってから気になっているのが、イスラエル・パレスチナを舞台とした映画。今回ご紹介するのは「もうひとりの息子」です。
生まれた時に湾岸戦争時の病院で取り違えられてしまった二人の息子。ひとりはイスラエル人でもうひとりはパレスチナ人という悲劇。
二つの家族が大きな苦悩の中にも、少しずつ希望を見出していく感動作です。
ユダヤ系フランス人ロレーヌ・レヴィ監督・脚本によるフランス映画。第25回東京国際映画祭で東京サクラグランプリと最優秀監督賞を受賞しています。
映画「もうひとりの息子」のあらすじ
イスラエルの大都会テルアビブに住むフランス系イスラエル人の家庭で、驚くべき事実が発覚したことから物語はスタート。息子が18歳になって兵役検査を受けたところ、彼が実の子供ではないという受け入れがたい事実を突きつけられます。
湾岸戦争の混乱期に生まれた病院で、お互いに敵対する関係であるイスラエル人とパレスチナ人の赤ちゃんが取り違えられていたのです。
予告編の動画をぜひご覧ください。
映画「もうひとりの息子」の背景
より映画を楽しむために、この映画のバックグラウンドについてご紹介します。
「ユダヤ人とアラブ人」・「イスラエル人とパレスチナ人」
画像:moviola.jp
「ユダヤ人とアラブ人」・「イスラエル人とパレスチナ人」という表現は、私たち日本人にとってはわかりづらい部分です。
ここでは厳密な定義ではありませんが、わかりやすくするためにシンプルな表現で説明させてください。
「ユダヤ人とアラブ人」という時には人種を指しているのではなく、宗教や文化などによるとらえ方です。
ユダヤ人はユダヤ教を信仰する人たち。アラブ人は主にイスラム教を信仰する人たちです。
それに対して、「イスラエル人とパレスチナ人」という表現をする時もあります。
イスラエル人とは、イスラエル国籍を持つ人たちです。イスラエルという国には、実際にはユダヤ人だけでなくアラブ人やその他キリスト教徒なども住んでいます。
パレスチナ人とはパレスチナに住むアラブ人たちです。
ただし、民族としてはアラブ系の人であっても、ユダヤ教を信仰していたらユダヤ人と呼ばれるのが複雑なところです。
パレスチナ自治区
ガザ地区とヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治区と呼ばれています。(映画に出てくるアラブ人家族は、このパレスチナ自治区で暮らしています。)パレスチナ自治政府が存在しているとは言え、独立国家ではありません。
1948年ユダヤ人によるイスラエル建国宣言以来、中東戦争が繰り返され、今でも多くのパレスチナ人が苦しい生活を強いられています。
自治区を封鎖するために「分離壁」が建設されました。
この「分離壁」については、映画「オマールの壁」の記事で解説しています。

テルアビブ
一方、映画に出てくるユダヤ人家族は、テルアビブに暮らしています。
テルアビブはイスラエル最大の都市で、高層ビルが立ち並ぶきわめて近代的なところです。
映画の中でビーチのシーンも出てきますが、ヨーロッパのリゾート地を思わせるような雰囲気です。
映画「もうひとりの息子」の感想
画像:moviola.jp
私にとって中東の話題やパレスチナ問題は遠い世界のことでした。今回イスラエルやパレスチナ自治区を訪れてはじめて現実の世界のことだと実感し、関連する映画を見るようになりました。
赤ちゃんが取り違えられた病院があるハイファは、ユダヤ人とアラブ人が共存している街です。
イスラエルと言えば、紛争地という印象を持つ人も多いかもしれません。実際にイスラエルに行ってみて、そういう場所ばかりではないことも知りました。
エルサレムもそうでしたが、ユダヤ人とアラブ人が普通に行き交う街もあるのが不思議なところです。危ういバランスの上で、平穏が成り立っているのかもしれません。
長い複雑な歴史を持ち対立しているとは言え、どんな国の人であってもそれぞれ家族は大切なもの。皆で食卓を囲むシーン、親子が対話するシーン、それぞれお金持ちであっても貧しくても、変わらない何かを感じます。
「自分はここの家の子供ではなかった」「敵対する側の家の子供だった」という辛い現実を突きつけられながら、少しずつ希望を見出していく二人の息子たち。そして、強くあたたかい母親の想いを感じる映画でした。
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